視線

祖母が亡くなってから3年
手付かずのままだった祖母の部屋の本棚を整理しました。
できればそのまま残したかったけれど
父が「部屋をリフォームする」ときかないので。
いつまでも時間を止めておくことはできませんものね・・

俳人だった祖母は
たくさんの本を残しました。
大切にしていたことも知っています。
捨てるのはしのびないから
思案したあげく
土蔵の二階の空部屋を
書庫にすることにしました。

祖母の部屋から土蔵の二階まで
祖母の残り香のある本たちをかかえ
薄暗い階段を何度も往復しました。

ひとりで作業していたのに
ずっと誰かがそばにいるような
私の手元をみつめているような
穏やかな視線を感じていました。

不思議な心持でした。

やがて
すべてを運び終わって
分類しつつ書棚に並べていたら
本のあいだから
ひらりと
写真が一枚舞い落ちました。

なつかしい笑顔
皺だらけのやさしい目元

被写体を確認した瞬間
さっきから感じていた視線は
祖母のものだったことに気づきました。