ものがたり

思い立って書棚の奥から昔の小説を取り出した。
片岡義男『彼のオートバイ、彼女の島』
読んだのは十代の半ば頃だったと思う。
オートバイと南の島、都会での一人暮らし、そして恋人。
青春の入り口にたったばかりの田舎の少女には
まぶしすぎる“夏”の物語だった。
ページをめくると、ずいぶん大人にみえていた主人公たちが
今ではずっと年下の若者として
同じストーリーのなかに、いた。
ドキドキしながらページを繰ったあの頃少女は
すでに人生の秋を迎えようとしているのに。

今日は久々に予定のない日曜日。
もう一度、あの“夏”を体験してみようか。